説明
トウカイドウヨツヤカイダン /原作:鶴屋南北。製作:大倉貢。脚本:大貫正義、石川義寛。音楽:渡辺宙明。監督:中川信夫。怪談噺の代表作であり幾多の「四谷怪談」映画の中でも最高峰との評価が高い1959年新東宝映画。若杉嘉津子、天知茂、江見俊太郎の名演技と画面構成と色彩や画面転換など全てに中川信夫監督の技量が反映していつ観賞しても面白い。四谷怪談の映画化では初のカラー作品の76分。高所恐怖症だった若杉嘉津子は中川監督の常連で体当たり演技。岡山四谷家の娘から妻・母親と花火の夜に毒を盛られて顔が爛れて伊右衛門への怨みを残しながら子供共々死亡するまでの過程と伊右衛門が間男したと卓悦を斬殺までを描かれたのは初めてではなかろうか。池内淳子はお梅の役どころで、1965年東宝「四谷怪談」ではお袖を演じている。ポスターはATGで1982年リバイバル上映のもの。特に伊右衛門の脳裏に浮かぶ恐怖イメージやお岩の声、赤子の声や時折登場する蛇など「人間の業」がこれほど鮮やかに表現された作品は稀有、ラストの仇討ちは墓場で完結して伊右衛門が「岩、許せ、許してくれ」と言って絶命すると、お岩が子どもを抱いて昇天菩薩となる美しさが恐怖の後だけに一層映える。中川演出の妙は俯瞰撮影やワンショット撮影など構図が素晴しいし、この作品が公開された1959年の夏は「四谷怪談」の競作となる。一方の相手は大映長谷川一夫主演の「大映の四谷怪談」であり長谷川御大と中田康子コンビ。因みに民谷伊右衛門を演じた俳優では、若山富三郎が忘れがたい。1956年新東宝「四谷怪談」、1961年東映「怪談お岩の亡霊」の2本で主演した唯一の俳優で生活に疲れて仕官を目指す為の欲望をぎらつかせるイメージが良かったし、その他「怪談一つ目地蔵」「怪談鬼火の沼」でも主演した怪談映画の常連だった。天知茂はテレビでも伊右衛門を演じているのでニヒルな伊右衛門の役は出世作になった。2025年7月に時代劇専門チャンネルで久しぶりの放映。1959年7月1日〜10日豊橋国際劇場、併映「怪談鏡ケ渕」「亡霊怪猫屋敷」怪談大会。【サイズ:B2 82R】【年代:1959】