説明
ケイシチョウモノガタリ ゼンコクジュウダンソウサ/脚本:長谷川公之。音楽:川部公一。監督:飯塚増一。警視庁物語シリーズ第21作は82分の長編。奥多摩で発見された焼死体。手がかりの「ハイビスカス」のバックルと、タバコ「うるま」から沖縄との関連が判明して、長田部長刑事・堀雄二がアメリカ占領下の沖縄へ飛び現地の清水元刑事と捜査。その他、犯人の影を追って、捜査は四日市、秋田にも及ぶ。沖縄では半袖だが、秋田ではコートを羽織っている。所轄は青梅署、「奥多摩焼死体事件捜査本部」。今回は、トップクレジットに、7人の刑事がズラリと並ぶ。神田隆・堀雄二・花沢徳衛・山本隣一・須藤健・南広・大木史郎。事件発生は6月2日、翌3日発見、7日に解決。クライマックスは上野駅大屋根下コンコース。フマキラー・ベープの宣伝入り。本作では戸籍乗っ取りに絡む殺人事件を追う刑事の捜査を通して、米軍占領下にある沖縄の諸問題、沖縄戦の記憶、高度経済成長で建設ラッシュに沸く土木業界、その陰で繁栄から取り残されて底辺で生きる貧民層の人々の姿、八郎潟干拓により漁場が荒らされてしまった漁師の問題、巨大な海外資本の日本進出による現実、石油コンビナートの建設などの問題をあぶり出す。犯人(八名信夫)の現在の妻(中原ひとみ)は、殺人犯の子供を産み、夫が戸籍を乗っ取ったどこの誰か分からない犯罪者だと知り、生まれたばかりの赤ん坊の絞め殺そうとし、刑事たちに制止される。絶望からベッドに突っ伏して号泣する彼女、傍らに立つ刑事の姿をカメラは俯瞰で斜めの構図で撮らえる。悲痛なラストシーン。1963年6月15日~21日第一東映、併映「陸軍残虐物語」。1963年8月18日~21日南東映、併映「大暴れ五十三次」。