説明
マブタノハハ/原作:長谷川伸。脚本・監督:加藤泰。音楽:木下忠司。長谷川伸の原作を「怪談お岩の亡霊」の加藤泰が脚色・監督、中村錦之助主演の股旅映画の傑作。流麗なカメラワークや長回し、的確なカッティングなど、加藤泰の職人芸が冴える。番場の忠太郎を中村錦之助、その母を小暮実千代、忠太郎の弟分に松方弘樹。5歳のときに母親と生き別れになった番場の忠太郎は、母を求めて20年間、博奕打ちとして旅を続けている。弟分の半次郎(松方弘樹)を逃がすために飯岡助五郎(瀬川路三郎)一家の子分を斬った忠太郎は、母を捜して江戸の町を歩き回るが、松方弘樹を追う飯岡一家(徳大寺伸、阿部九州男、鈴木金哉、尾形伸之介)もまた江戸に姿を現していた。料亭の女主人おはま(木暮実千代)が江州にいたと聞いた忠太郎は、もしや生き別れの母親ではないかと彼女に会いに行くが「私の忠太郎は九つのとき流行病で死んだ」と告げられてしまう。忠太郎とおはまの対決場面が大きなヤマ場。中村錦之助と木暮実千代。二人の演技合戦が見もの。とくに錦之助がおはまが実の母と知ったとき、興奮で息が荒くなるところなど、泣かせる。そして、おはまが娘と家の身代を思って、忠太郎を拒否するしかなかった心情もよく分かる。忠太郎がヤクザらしからぬ母思いで、母が貧しい境遇にあった場合を考えて百両という大金を懐に蓄えているところ、ここが要になって劇を引き締める。その金を錦之助が取り出す時、何重にも厳重に取り出すのが良い。そしてラスト木暮が「忠太郎~!」と叫んでも橋の下で錦之助が涙で堪えて飯岡一家を「親がいる奴はどいてろ」の子おt場で怒りのドスで叩っ斬る。旅人姿のシルエットで「終」。この映画には「母」が4人登場するが全ては実の母までの伏線、4人の母は松方の母親夏川静江に手紙を書いて貰う場面での手のぬくもり、江戸での盲目の三味線弾き浪花千栄子とのエピソード、夜鷹の沢村貞子と続いて木暮実千代に繋がる構成。加藤泰の長回しが成立するのは俳優陣の貢献によるところが大きい。戦前1931年片岡千恵蔵、戦後は1952年堀雄二、1955年若山富三郎に次いで4回目の映画化。1962年1月14日~22日豊橋第一東映、併映 大川橋蔵「大江戸評判記 美男の顔役」。1962年4月4日~10日銀座東映、併映「ひばりチエミの弥次喜多道中」。1962年7月14日~17日豊橋南東映、併映「南太平洋波高し」。【サイズ:A4ポスター写真】【年代:1962年】