説明
ニンゲンヒョウテキ/原作:藤原審爾「新宿警察復讐の論理」。音楽:いずみたく。脚本・監督:井上梅次。若林豪と山崎努の共演で刑事(若林豪)のために刑務所に送られ、恋人(香山美子)の気持まで奪われた男(山崎努)の復讐劇を描く警察サスペンス。存在感を見せるのが山崎努。黒澤明の「天国と地獄」を皮切りに、堀川通弘の「恐怖の時間」でもサイコパス気味の男の不気味さと怖さが際立っていたが、この映画でもその系譜に連なる“復讐”に凝り固まった犯罪者役を好演。情報提供者であり、山崎にホの字の太地喜和子も、相変わらずのいい女ぷりを見せる。気性がさっぱりした性格の一方、情が深そうでもある雰囲気が良く出ている。また、普段悪役で鳴らす安部徹と神田隆が、それぞれ人情家の係長と粋な計らいをする警察署長を演じているのも、東映作品を見慣れた者からすると、彼らの善人芝居が見どころのひとつ。尤も神田隆は「警視庁物語」シリーズで捜査主任を24本演じているので悪役より警察イメージか?悪役の役者の層が薄い松竹も、東映から借りてきた今井健二一人居るだけで体裁が整い組織の親玉より片腕となっている今井のほうが貫禄と頼りがいがあるのは御愛嬌。本作はサスペンスにも関わらず、歌う場面が多く見られる。尾崎奈々の会社演芸会では、にしきのあきらが当時流行歌だった「空に太陽がある限り」を歌い、斗志子は男装して女装した男達をバックバンドに従えて、ピンキーとキラーズのパロディのようなグループ名で歌い、帰りのバスの中では、社員一同が「何かいいことありそうな」を合唱する場面がある場面もあってそこは松竹らしい。1971年9月15日~10月1日豊橋松竹、併映「さらば掟」。1971年12月15日~21日松竹シネマ、併映「尼寺博徒」。【サイズ:B2】