説明
トウエイハッテンカンシャキネン チュウシングラ/脚本:比佐芳武。音楽:深井史郎。監督:松田定次。戦後1951年に誕生した東映が業界第1位となった感謝記念で製作したオールスター忠臣蔵。東映は1952年~1953年に「赤穂城」「続赤穂城」「女間者秘聞赤穂浪士」の3部作、1956年に創立5周年で「赤穂浪士」、1959年「忠臣蔵」、1961年創立10周年として「赤穂浪士」と合計4回オールスターで忠臣蔵を製作し時代劇王国の偉容を誇る。この作品は松田定次監督で二部作3時間一挙上映、当然大ヒットだがこれだけの大作公開でも併映があり実質3本立て。「櫻花の巻」は赤穂城明け渡しまで、「菊花の巻」は吉良邸討ち入りまでを描く183分。大石内蔵助:片岡千恵蔵、脇坂淡路守:市川右太衛門、浅野内匠頭:中村錦之助、東千代之介:岡島八十右衛門、大友柳太朗が堀部安兵衛、大川橋蔵が岡野金右衛門、美空ひばりが岡野の恋人設定でおたかで吉良方に入り込む、吉田忠左衛門:大河内傅次郎、北大路欣也は大石主税。両御大の見せ場は赤穂城明け渡しの場面で互いの心情を理解する腹芸。橋本平左衛門:月形龍之介で内匠頭切腹に追い腹切腹、美空ひばりが橋本の娘たか、不破数右衛門:山形勲、小野寺十内:沢村宗之助、原惣宇佐美淳也、吉良上野介:進藤英太郎。ラストの討入りでひばりが吉良の首実検をする役どころ。千坂兵部:山村聰、上杉綱憲:中村賀津雄、大石の妻りく:東映では2度目の木暮実千代、内匠頭の妻揺泉院:大川恵子、雛菊:花柳小菊、お軽:桜町弘子、戸田局:長谷川裕見子。知人である錦之助ファンクラブの藤井秀男さんによる錦之助の浅野内匠頭の演技について素晴らしいコメントがあるので引用する「『忠臣蔵』での錦之助の浅野内匠頭は、名演である。私の知る限り、最高の内匠頭である。映画の中で、右太衛門の脇坂淡路守が、内匠頭の死を惜しみ、名君として花開く前に散らせてしまった慨嘆する場面があるが、錦之助の内匠頭はそれにぴったりだったと思う。錦之助も実に良く工夫して、この未完成な名君を表現していた。「未完成」というところがポイントなのである。『忠臣蔵』が作られたのは、昭和34年の初めであるが、その前年、錦之助は『一心太助』シリーズを二本撮り、名君・徳川家光をすでに演じている。錦之助のお殿様を私が大好きなことはすでにあちこちで書いているが、品の良さ、情愛の深さが堪らなく良い。家光では、名君の余裕、貫禄すら感じる。それが、浅野内匠頭では、この余裕、貫禄を消して、品格と情愛だけで錦之助は勝負している。未完成な名君の頼りなさ、線の細さを表現している。そこが錦之助の工夫で、うまいなーと私が感心するところである。」とコメント、言い得て妙。岡野橋蔵が御婆松浦築枝との別れ場面、堀部弥兵衛・安兵衛親子と弥兵衛の娘お甲である千原しのぶとの雪の別れ場面などが見せ場、討入は雪の降る場面でのスターチャンバラの見せ場、因みに大川橋蔵は1959年12月「血槍無双」で杉野十平次に扮して討入はこの年2回、尚この作品では立花左近や垣見五郎兵衛は登場せず、ラストは仇討ちを果たした大石たちが御政道を正す想いで徳川幕府・江戸城に向かって勝鬨をあげ千恵蔵の顔アップ場面で「終」。1959年1月15日~27日第一東映、併映「幕末美少年録 会津の決死隊」。1959年8月13日~18日銀座東映、併映「白い通り魔」。1960年1月27日~30日南東映、併映「ふり袖ざくら」。1960年12月12日~15日南東映、併映「浪曲国定忠治赤城の子守唄」【サイズ:B2地方版・縦長大型プレス】【年代:1959】