説明
ケイシチョウモノガタリ カオノナイオンナ/企画:斉藤安代。脚本:長谷川公之、音楽:富田勲。監督:村山新治。警視庁物語シリーズ第9作。荒川土手に女のバラバラ死体が上る。死体は胴の部分だけ。対岸に両足が発見された。解剖の結果同一人物の胴と足であることが判明。被害者は三十歳前後の女、死亡推定日は三日前、死体は絞殺後切断されたこと、足の長さから身長は155センチ、卵巣の手術痕等のことが判明。新荒川大橋で三日前「5す21……」ナンバーの車から男が何かを投げ込もうとしてたことから、実験の結果は芳しいものではなかった。手と首が発見されたが腐敗がひどく身許不明。死体の顔から出た義歯と隆鼻用の象牙、自動車のナンバーをたよりに刑事達の足が四方に飛ぶ。歯科医により被害者はキャバレーの女給小沢初江と分る。初江と関係の成田(今井俊二)が線上に浮上るがアリバイがある。次に自動車所有者吉岡(杉義一)が逮捕。吉岡にはひき逃げやハンケチタクシーの余罪はあったが真犯人ではなかった。しかし事件当夜仙ちゃんと云う男に車を貸したと云う吉岡の妻の証言によって、仙ちゃんこと米倉仙三(潮健児)と云う男が浮かぶ。仙三の家から被害者のハンドバッグと血痕を発見、仙三が初江の預金何十万を引出した事が判明。やがて愛人キミ子(星美智子)と密会するために岸壁にやって来た仙三と張込む刑事との闘いの後、仙三の腕に手錠がかかる。女給や芸者と関係を持ちながら令嬢との結婚を夢見るキャバレーのアルバイトボーイ、ハンカチ・タクシー(モグリのタクシー)をして稼ぐ運転手とその妻(谷本小夜子)、水上生活者だったストリッパーとその母(戸田春子)、エロ写真を売りさばくチンピラなど、事件から社会の断面が鮮やかに切り取られ、世相や社会の底辺で生きる人間の哀しさ。村山新治によって『警視庁物語』シリーズは最初のピーク。失われた昭和の東京の風景――生活者の匂いのする風景が圧倒的で、画一的な無味乾燥とした現代の風景ではなく、それだけでもう濃密なドラマが立ち上がってくるような舞台が映る。1959年2月18日~22日第一東映、併映里見浩太郎「唄しぐれ千両旅」。1959年7月8日~14日銀座東映、併映「右門捕物帖片目の狼」「風小僧暁の凱歌」。1960年3月7日~10日南東映、併映「孔雀城の花嫁」。【サイズ:B2】【年代:1959年】